『ドラえもん』のエピソードの中に『白ゆりのような女の子』と言うのがある。
それはパパののび助が、息子ののび太に自らの戦争体験を語り始める事から始まる。
日本全国の都市が本土空襲に晒されていた太平洋戦争末期、のび助は同級生達や教師と共にとある田舎の寺院に集団疎開していた。
とても授業どころではなく、小学生といえども毎日畑作りや防空壕掘りなどに駆り出され、疲労困憊の中で腹を空かせる毎日を送っていた。
そんなある日、のび助は夕暮れの河原で白いワンピースを着た見知らぬ少女に出会うのだ。
色が白く、髪が長い、大きな丸い目をした「花に例えれば白ゆりのような」その女の子(のび助には、髪を三つ編み2本にまとめた少女漫画風の美少女として記憶されている)とは一言も言葉を交わさなかったが、不思議なことに少女がのび助をいたわる気持ちがはっきりと伝わってきたという。
少女はのび助に1枚のチョコレートを渡して夕もやの中に消えていき、二度とのび助と出会うことはなかった。
当時では貴重だったチョコレートのおいしさが、のび助を元気づけたことは言うまでもなかった。
その話を聞いたドラえもんとのび太は、のび助のために白ゆりの少女を写真に収めようと、少女と出会ったという昭和20年6月10日へ「タイムマシン」で向かうのである。
到着した先では、小学生時代ののび助が同級生達と畑を開墾していたが、のび太同様に運動の苦手なのび助は作業が遅く、教師から叱責とビンタを受けていた。
休憩時間になっても割り当ての終わらないのび助だけは休むことを許されず、ついには目を回して気絶してしまう。
たまらず飛び出した2人はのび助を木陰に入れて介抱し、容姿のよく似たのび太が「スーパー手ぶくろ」を装備して代わりに開墾を終わらせることにした。
ところが、戻ってきた教師に髪が丸刈りでないことを見とがめられたため(別人とは気づかなかったようである)、ドラえもんが姿を消してバリカンでのび太の髪を刈り上げ、事なきを得た。
(のび助に扮した)のび太のおかげで今日の農作業が終わり喜ぶ同級生たちだったが、その歓声で意識を取り戻したのび助は、自分がさぼっている間に作業が終わってしまったものと思い込み、教師からのさらなる仕置きを恐れてあてもないまま逃げ出してしまう。
のび助が消えたことに気づいた2人は河原に向かい、のび助と少女を待ち受けることにした。
この間、先ほど丸刈りにした髪を元に戻すために、ドラえもんは「30分できく毛はえぐすり」をのび太に使用する。
ところが、夕暮れになってものび助も少女も河原に現れない。
のび太は2人を探してうろうろするうちにうっかり肥溜めに落ちてしまう。
川で身体を洗うも臭いが落ちない為、ドラえもんが「脱臭剤」で臭いを落とし、そのままドラえもんはのび太の着替えを探しに向かった。
その直後、河原にのび助が現れたのだ。
ところが、現代で聞かされていた話と異なり、辛い疎開生活に疲れ果てたのび助は、思い詰めたあまり川へ入水自殺を図ろうとし始めたのである。
大慌てするのび太だったが、その時先程の毛はえぐすりが過剰に効果を発揮し、腰に届くような長髪になってしまった。
そこへドラえもんが戻ってきたが、近くの物干しから夕闇の中で適当に失敬してきた服は女性もののワンピースであった。
やむを得ずのび太が着替えた時にドラえもんは気づいた。 「色が白くて、髪が長く、大きな丸い目の女の子」は、女装したのび太だったのである。
偶然にもドラえもんはその時ポケットの中に板チョコレートを持っており、それを持ったのび太が河原へと降り、のび助の入水を食い止めたのだった。
出会いの様子をカメラに収めて現代に戻った2人だったが、写真の少女は当たり前だが女装したのび太である。
のび助がママの玉子にも当時の思い出話をなつかしく語る様子を見て、「思い出は美しいままにしておいてあげよう」と、ドラえもん達は真相を語らぬまま写真を破り捨てるのだった。
親父は、このエピソードを、娘夫婦宅で孫一子ちゃんとYouTubeで見た。
のび太の父であるのび助が戦争経験者であるとすると、のび太は親父と同世代である。
するとのび太は既に還暦を過ぎ、再雇用で年金受給が65歳まで勤めている事だろう。
のび助と玉子も90歳は超えているか間際であろう。
しかし毎週金曜日に放映されるアニメでは、のび太は相変わらず小学生で、ドラえもんは22世紀に帰ることは無く、現代で活躍しているのだ。
コメント
コメント一覧 (2)
夏休みの宿題で地球を育てるキットをするというもの、結局人間同士が戦争をしておわる…
これの繰り返しだったような。
これって今の地球ではないの?って考えさせられるアニメだと思う。
宇宙に地球、自然に勝とうなんて小さな人間が何言うのって思います…。
市川海老之助
が
しました
ドラえもんって結構教意的なアニメですよね。
僕がドラえもんと出会ったのは、小学3年生と言う小学館の雑誌でした。
最初は21世紀はこんな便利な道具が出来るという、ドラえもんのポッケから出る未来の道具の紹介するマンガでした。
市川海老之助
が
しました