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家の近所のⅠさんご夫婦が住んでいらした。「住んでいらした。」と過去形なのは、3年程前にご夫婦で散歩していらしたが、その後はお目にかかっていないからである。
ご主人は25年前に脳梗塞を起こした。
右半身が不自由になられた。
病院を退院後は暫く家のベットに寝ついていたとのこと。
今まで健康に働いていたのに。
突然の災難にⅠさんはさぞかし酷く狼狽えたことであろう。
当時聞いたところによると、病症は酷くて家で寝込むとことが当然と思われたそうである。
Ⅰさんの奥さんは看護師さんであった。
子供が出来たころから暫くは専業主婦であったが、子供が手を離れると復帰していた。
Ⅰさんが脳梗塞を起こすと、奥さんは仕事を辞めて、旦那の介護に専念した。
介護と言うよりリハビリであった。
奥さんは先ずⅠさんが自分でトイレで排尿・排便が出来るようリハビリしたそうだ
脳梗塞で麻痺を起こしているから身体が湾曲する。
そのままにしておくと筋肉が固まって、歪みを治すことっは出来なくなるらしい・
だから看護師の奥さんは、それを強く矯正したらしい。
Ⅰさんにとってはそれは激痛が走るもので、彼が泣き言をいうのも少なくなかった。
このことは近所の家人の知るところとなり、「ひどい奥さん」と讒言が流れた。
Ⅰさんの奥さんは、寝込んだ彼を介護する事が嫌だった訳ではなかったと思う・
Ⅰさんが寝込めば、それは彼にとって著しく不幸である。
だから奥さんは夫を不幸にさせないために、自分が「ひどい奥さん」と讒言されることを厭わず、懸命に夫をリハビリしたのである。
3年程前にご夫婦でニコニコしながら散歩した。
I さんは杖を使いながらであるが、しっかり歩いていた。
その姿を見て、奥さんの想いが成り立ったと思えた。
そのころ親父の歩速は、Ⅰさんが杖を使いながらの歩速より遅かった。
思い出してみるとあの頃脊髄小脳変性症の発端が現れていたのかも知れない。
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