妻が白内障になった。
I歯科医師が妻を治療中に診療代のライトを当てた際に瞳に曇を見つけて、「白内障ではないか。」と教えてくれたそうである。
眼科クリニックで診察を受けたら、まだ初期の段階で、手術が必要かどうか検査を7月初旬に行うらしい。

もし手術が必要になれば、手術をすればよく見えるようになるそうである。
医学の進歩はありがたいものだが、手術の後しばらくは無理をさせるわけにはいかない。
そこで、親父が夕飯を作り、家事を引き受けることになった。
もっとも、これまで台所に立つことが少なかった私は、何をするにもおぼつかない。
米を研ぐだけでも、「水加減はこれでいいのか」と首をひねり、味噌汁を作れば「少し薄いわね」と妻に笑われる。
脊髄小脳変性症で身体がふらつく親父にとって、家事は決して楽ではない。
それでも、長年私を支え続けてくれた妻のことを思えば、文句など言っていられない。
結婚して四十年、病気になってからは、私のほうが支えてもらうことのほうがずっと多かった。
通院も、日々の暮らしも、いつも妻がそばにいてくれた。
だから今度は、ほんの少しだけ恩返しをする番である。
慣れない包丁を握りながら、私は改めて思う。
毎日当たり前のように食卓に並んでいた夕飯は、決して当たり前ではなかったのだと。
妻の目がよくなり、また元気に台所に立てる日が来るまで、親父の奮闘は続く。
多少味が濃かったり薄かったりしても、それもまた夫婦の思い出になるのだろう。

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I歯科医師が妻を治療中に診療代のライトを当てた際に瞳に曇を見つけて、「白内障ではないか。」と教えてくれたそうである。
眼科クリニックで診察を受けたら、まだ初期の段階で、手術が必要かどうか検査を7月初旬に行うらしい。

もし手術が必要になれば、手術をすればよく見えるようになるそうである。
医学の進歩はありがたいものだが、手術の後しばらくは無理をさせるわけにはいかない。
そこで、親父が夕飯を作り、家事を引き受けることになった。
もっとも、これまで台所に立つことが少なかった私は、何をするにもおぼつかない。
米を研ぐだけでも、「水加減はこれでいいのか」と首をひねり、味噌汁を作れば「少し薄いわね」と妻に笑われる。
脊髄小脳変性症で身体がふらつく親父にとって、家事は決して楽ではない。
それでも、長年私を支え続けてくれた妻のことを思えば、文句など言っていられない。
結婚して四十年、病気になってからは、私のほうが支えてもらうことのほうがずっと多かった。
通院も、日々の暮らしも、いつも妻がそばにいてくれた。
だから今度は、ほんの少しだけ恩返しをする番である。
慣れない包丁を握りながら、私は改めて思う。
毎日当たり前のように食卓に並んでいた夕飯は、決して当たり前ではなかったのだと。
妻の目がよくなり、また元気に台所に立てる日が来るまで、親父の奮闘は続く。
多少味が濃かったり薄かったりしても、それもまた夫婦の思い出になるのだろう。
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