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これはもう、冷蔵庫に麦茶が入っているのと同じくらい当たり前のことで、もし入っていないと、家人から「うちは何か大変なことでも起きたのか」と心配されかねない。
あずきバーというのは不思議なアイスである。世の中には、舌の上でふわりと溶ける高級アイスがいくらでもある。
名前も横文字で、食べると何となく自分までお洒落になったような気分になる。
しかし、あずきバーは違う。
まず硬い。
実に硬い。
冷凍庫から出したばかりのあずきバーに不用意にかじりつくと、こちらの歯の方が負ける。
昔、剣豪は真剣で竹を斬ったというが、現代人はあずきバーを前にして、自分の歯の老いを知るのである。
親父は最近、あずきバーを食べる時には、まず数分間テーブルの上に置いておくことにしている。
若い頃ならば力任せに噛み砕いたものだが、還暦を過ぎると、アイス一本にも人生の知恵が必要になる。
しかし、少し柔らかくなったところを齧ると、これが実にうまい。
小豆の粒が舌の上でほろりと崩れ、上品な甘さが広がる。
甘すぎず、かといって物足りなくもない。
まるで長年連れ添った夫婦の会話のような味である。
派手さはないが、妙に落ち着く。
考えてみれば、小豆を凍らせただけのような素朴なアイスが、半世紀以上も愛され続けているというのは大したものである。
新商品が次々と現れては消えていくアイス界にあって、あずきバーはまるで町内会の古老のように、どっしりとそこに居座っている。
今年の夏も、親父は冷凍庫を開け、一本取り出す。
そして、まず歯の具合を確かめながら、静かに夏の訪れを味わうのである。
あずきバーは冬も味わえる。
マグカップにあずきバーを1本入れて、それを電子レンジで500W20秒で温めると、『あずきバーしるこ』が出来るのである、
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