脊髄小脳変性症と診断されてから、自分でも戸惑うことがある。
 それは、時々、どうしても抑えられない感情が突然湧き上がってくることだ。

 テレビのニュースを見ているだけなのに、妙に腹が立ってしまう。
 孫の何気ない一言に胸が熱くなり、涙が出そうになることもある。
 あるいは、些細なことで妻に強い口調で返してしまい、後になって「あんな言い方をしなければよかった」と反省する。

 若い頃の私は、どちらかといえば感情を表に出さない人間だった。
 だから、今の自分の感情の揺れに、いちばん驚いているのは私自身かもしれない。

 脊髄小脳変性症は、単に歩き方がぎこちなくなったり、言葉がもつれたりする病気ではない。
Copilot_20260607_160942 病気と共に生きる不安、思うように身体が動かないもどかしさ、将来への心配…。
 そんなものが少しずつ心の中に積もっていく。
 その積み重ねが、時として感情の堤防を越えてしまうのだろう。

 しかし、感情が溢れるということは、まだ心が生きている証でもある。
 腹が立つのも、悲しいのも、嬉しいのも、それだけ世の中や家族に関心を持ち続けているからだ。

 最近は、感情が高ぶった時には無理に押さえ込まず、「今日は心が疲れているのだな」と考えるようにしている。
 そして、妻と散歩をしたり、好きなお菓子を食べたりしながら、ゆっくり気持ちを整える。

 病気になってから、身体だけではなく、心にもいたわりが必要なのだと知った。
 人生も後半戦になると、自分自身を上手にあやすことも、大切な知恵のひとつなのである。











  8月1日に別宅『爺の風は強く吹いている』を開設しました。
 併せてお楽しみください。




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