付箋一枚で夫婦が会話をする。
 そんな夫婦がいると妻から聞いた。

Copilot_20260702_070605 最初は冗談かと思った。
 「おはよう」も「おかえり」も、声ではなく紙切れで伝えるのだろうか。
 冷蔵庫や食卓、玄関先に小さな付箋が並ぶ光景を想像すると、少し寂しい気持ちにもなる。

 けれど、よく考えてみれば、人は毎日言葉を交わしていても、本当に心が通じているとは限らない。
 大きな声で言い合っても伝わらないことがある一方で、小さな付箋に書かれた「ありがとう」や「お疲れさま」の一言が、思いのほか胸に響くこともある。

 付箋は小さい。だから余計な言葉は書けない。
 限られたスペースだからこそ、本当に伝えたいことだけを書く。
 案外、それが夫婦にはちょうどいい距離感なのかもしれない。

 もちろん、私はやはり声で笑い合える夫婦でありたいと思う。
 声には温度があり、表情があり、沈黙さえも含まれている。
 しかし、もし言葉が刺になってしまう日があるなら、付箋という小さな橋を渡してみるのも悪くない。

 妻から聞いた「付箋夫婦」の話は、少し変わった夫婦の話では終わらなかった。
 夫婦とは、どんな方法であれ、今日も相手に「伝えよう」とする努力を続ける人たちのことなのだと、そんなことを考えさせられたのである。


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