昔の夏は単純であった。
 暑ければ扇風機の前に座り、麦茶を飲み、最後の切り札として「みぞれアイス」があった。

PXL_20260713_115528266~2 半透明なプラスチックのカップに、真っ白なみぞれがぎっしり詰まっている。
 色気はない。果物もない。アイスクリームもない。ただ、みぞれ一本勝負である。

 ところが今の冷凍ケースをのぞくと、事情が違う。
 真ん中にバニラアイスがドンと鎮座し、そのまわりをかき氷が取り囲む。「フロート」と名乗る豪華版が、いかにも「こちらが主役です」と幅をきかせている。

 昭和の終わり頃から、かき氷の真ん中にアイスクリームを入れたフロート系の商品が人気を集めるようになった。

PXL_20260713_115631947~2 もちろん、あれはうまい。

 うまいのだが、親父には少々落ち着かない。

 最初はシャリシャリと氷を食べているのに、途中からスプーンがアイスクリームに突入する。
 口の中が「冷たい係」と「甘い係」に分業を始めるのである。

 親父は、それがどうも気になる。
 最後までシャリシャリでいてほしい。

 最初の一口も、最後の一口も、みぞれ。
 人生にも一貫性というものがある。

 アイスクリームが悪いわけではない。アイスクリームはアイスクリームだけで食べればいい。

 みぞれはみぞれだけで食べればいい。
 結婚したからといって、何でも一緒になればいいというものではない。

 最近は「進化系かき氷」だの「ふわふわ氷」だの、豪華さを競う時代らしい。

 しかし、真夏の午後、汗をかきながらスプーンでガリガリと削るように食べる、あの何の飾り気もない真っ白なみぞれ。

 あれほど潔い夏の味は、なかなか見当たらないのである。



PXL_20260714_125642642~2 見つけた。
 飾り気もない真っ白なみぞれである。

 あるスーパーの氷菓売り場を丁寧に探したらかき氷と書かれたみぞれがあったのだ。

 スプーンでガリガリと削るように食べた。
 懐かしい。

 
 確認してみたら以前に食べたコーヒーフロートも、今回のかき氷もスーパーのプライベートブランドであった。
 いずれも三重県津市のフタバ食品株式会社が製造していた。









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