テレビのニュースを見ていると、ときどき胸がヒヤリとする。

 「駅前で通り魔事件」 「商店街で刃物を持った男」 「住宅街にイノシシ出没」

 最近もイノシシが人を襲ったというニュースが流れていた。
 相手は野生動物だから、こちらの都合など考えてはくれない。
 一直線に突進してくる。


 そんなニュースを見るたび、脊髄小脳変性症の親父は、つい自分を重ねてしまう。
 「もし親父だったら……。」
 逃げられない。

Copilot_20260714_194109 健康な人なら百メートルでも二百メートルでも夢中で走れるだろう。
 しかし親父は、歩くこと自体がリハビリである。
 急に走れと言われても、体は思うように動かない。

 若い頃は「逃げる」なんて誰でもできることだと思っていた。
 ところが病気になって初めて知った。

 逃げることにも才能がいる。
 転ぶことなく駆け出せる足。
 素早く向きを変えられる体。
 それは健康という財産だったのである。

 ニュースでは「その場から逃げてください」と簡単に言う。
 もちろん、それが正しい。
 しかし、逃げたくても逃げられない人がいることも、世の中には少しだけ知っていてほしい。

 だから親父は今日も思う。
 危ない場所には近づかない。
 周囲をよく見る。
 無理をしない。

 逃げ足に自信がないのなら、危険に近寄らないことが一番の護身術なのである。

 若い頃には考えもしなかったが、人間は年を重ね、病を抱えると、「無事に家へ帰る」という、ごく当たり前の一日が、実はとてもありがたいことだったのだと気づくのである。



人気ブログランキング
人気ブログランキング


にほんブログ村 病気ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 病気ブログ 脊髄小脳変性症へ
にほんブログ村


ブログランキング・にほんブログ村へ