今日から「極暑」である。猛暑ではない。酷暑でもない。
極暑。
こうなると、暑さは天気ではなく、ほとんど生き物である。
朝から「今日はやったるぞ」とばかりに襲いかかってくる。
親父も負けてはいない。
まず水をゴクゴク飲む。
喉が渇いてからでは遅い、とテレビもお医者さんも口をそろえる。だから渇く前に飲む。
まるでラクダの予習である。
次にポケットから取り出すのは、カバヤの塩分チャージタブレッツ。一粒カリッ。
もう一粒カリッ。
塩分だけではない。
ミネラルまで補給した気分になる。
気分というものは大事だ。
「これだけやったんだから熱中症には負けないぞ」という、
根拠のあるような、ないような自信が湧いてくる。
昔は麦茶一本で夏を乗り切った。
今は、水分補給、塩分補給、ミネラル補給、日傘、冷感タオル、携帯扇風機……。
夏と戦うための装備が、ちょっとした冒険家並みである。
近年は日本でも熱中症への警戒が一段と強まり、暑さ対策が日常になってきた。
それでも相手は手ごわい。
「今日は少しくらい大丈夫だろう」
その一瞬の油断を、夏は見逃してくれない。
だから親父は今日も水筒を抱え、タブレットをカリッとかじる。
まるで暑さと将棋を指しているようなものだ。
一手、水。
一手、塩。
そして最後の一手は、
「熱中症よ、今日はお断りだ!」
これで勝てる保証はない。
だが、夏という相手には、用心深いくらいがちょうどいいのである。
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