「万物流転」という四字熟語は、いかにも哲学書の1ページから抜け出してきたような、少し気取った顔をしている。
 しかし、その意味は案外、スーパーの特売コーナーのほうがよく教えてくれる。

Copilot_20260728_194815 昨日まで山積みになっていたスイカが今日は梨に替わり、冷やし中華の棚はおでんの具に場所を譲る。

 「えっ、もう秋?」
と思った途端、翌日はまた35℃を超える猛暑である。

 季節というものは、律義なのか気まぐれなのか、さっぱり分からない。

 人間もまた流転する。

 若い頃は「脂っこい肉を腹いっぱい食べたい」と言っていた人が、70を過ぎると「今日は豆腐がうまい」としみじみ語る。

 あれほど嫌いだった漬物を、自分でポリポリ音を立てて食べている。

 味覚まで年を取るらしい。

 家の中も変わる。

 子どもが独立し、部屋は静かになった。その代わり、健康食品や血圧計や湿布が幅をきかせるようになる。

 人生とは、家具の配置換えではなく、興味の配置換えなのである。

 もっとも、変わるのは人間だけではない。

 新品だった靴はくたびれ、愛車は少しずつ傷が増え、鏡の中の自分には白いものが混じる。

 「昨日と同じ今日」はあるようでいて、実はどこにもない。
 万物流転とは、この世のすべてが止まることなく変化し続けるということだ。

 だから、変化を嘆くだけではもったいない。

 今日は今日しかなく、この夏も二度と戻らない。

 冷えた麦茶を一口飲んで、「暑い、暑い」とぼやけるのも、実は今年だけの夏の味なのである。

 万物流転とは、失うことではない。

 変わるからこそ、新しい楽しみが生まれるという、人生からの静かな励ましなのかもしれない。


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