「万物流転」という四字熟語は、いかにも哲学書の1ページから抜け出してきたような、少し気取った顔をしている。
しかし、その意味は案外、スーパーの特売コーナーのほうがよく教えてくれる。
昨日まで山積みになっていたスイカが今日は梨に替わり、冷やし中華の棚はおでんの具に場所を譲る。
「えっ、もう秋?」
と思った途端、翌日はまた35℃を超える猛暑である。
季節というものは、律義なのか気まぐれなのか、さっぱり分からない。
人間もまた流転する。
若い頃は「脂っこい肉を腹いっぱい食べたい」と言っていた人が、70を過ぎると「今日は豆腐がうまい」としみじみ語る。
あれほど嫌いだった漬物を、自分でポリポリ音を立てて食べている。
味覚まで年を取るらしい。
家の中も変わる。
子どもが独立し、部屋は静かになった。その代わり、健康食品や血圧計や湿布が幅をきかせるようになる。
人生とは、家具の配置換えではなく、興味の配置換えなのである。
もっとも、変わるのは人間だけではない。
新品だった靴はくたびれ、愛車は少しずつ傷が増え、鏡の中の自分には白いものが混じる。
「昨日と同じ今日」はあるようでいて、実はどこにもない。
万物流転とは、この世のすべてが止まることなく変化し続けるということだ。
だから、変化を嘆くだけではもったいない。
今日は今日しかなく、この夏も二度と戻らない。
冷えた麦茶を一口飲んで、「暑い、暑い」とぼやけるのも、実は今年だけの夏の味なのである。
万物流転とは、失うことではない。
変わるからこそ、新しい楽しみが生まれるという、人生からの静かな励ましなのかもしれない。

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しかし、その意味は案外、スーパーの特売コーナーのほうがよく教えてくれる。
昨日まで山積みになっていたスイカが今日は梨に替わり、冷やし中華の棚はおでんの具に場所を譲る。「えっ、もう秋?」
と思った途端、翌日はまた35℃を超える猛暑である。
季節というものは、律義なのか気まぐれなのか、さっぱり分からない。
人間もまた流転する。
若い頃は「脂っこい肉を腹いっぱい食べたい」と言っていた人が、70を過ぎると「今日は豆腐がうまい」としみじみ語る。
あれほど嫌いだった漬物を、自分でポリポリ音を立てて食べている。
味覚まで年を取るらしい。
家の中も変わる。
子どもが独立し、部屋は静かになった。その代わり、健康食品や血圧計や湿布が幅をきかせるようになる。
人生とは、家具の配置換えではなく、興味の配置換えなのである。
もっとも、変わるのは人間だけではない。
新品だった靴はくたびれ、愛車は少しずつ傷が増え、鏡の中の自分には白いものが混じる。
「昨日と同じ今日」はあるようでいて、実はどこにもない。
万物流転とは、この世のすべてが止まることなく変化し続けるということだ。
だから、変化を嘆くだけではもったいない。
今日は今日しかなく、この夏も二度と戻らない。
冷えた麦茶を一口飲んで、「暑い、暑い」とぼやけるのも、実は今年だけの夏の味なのである。
万物流転とは、失うことではない。
変わるからこそ、新しい楽しみが生まれるという、人生からの静かな励ましなのかもしれない。
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