人が亡くなったというニュースを見て、「ああ、ひとつの時代が終わったなあ」と思うことがある。

スクリーンショット_28-7-2026_182533_www.msn.com 元中日ドラゴンズの投手であり、その後は人気タレントとして活躍した板東英二さんが、7月22日、86歳で亡くなられたという。
 慢性心不全だったそうだ。
 ご本人の希望で葬儀は家族だけで静かに執り行われたという。

 親父くらいの世代になると、板東英二さんは「元プロ野球選手」というより、「ゆで卵の人」である。
 テレビに出れば、ゆで卵。
 クイズ番組でも、ゆで卵。

 旅番組でも、なぜかゆで卵。
 「あの人、家では毎日ニワトリを飼っているんじゃないか」と本気で思ったくらいである。

 もちろん、野球選手としても大変な人だった。
 甲子園では25奪三振という今なお語り継がれる記録を残し、中日ドラゴンズでも77勝を挙げた名投手だった。
 だが、世間というものは不思議なもので、偉大な記録より「ゆで卵」の印象のほうが強かったりする。

 「口から出れば世間」という言葉がある。
 人は何を成し遂げたかだけではなく、何をしゃべり、どんな笑顔を見せたかでも記憶される。
 板東さんは、そのどちらも持っていた人だった。
 剛速球を投げた右腕も、お茶の間を笑わせた軽妙な話術も、同じ一人の人間の中にあったのである。

 昭和という時代は、スポーツ選手がテレビに出ると、どこか照れくさそうで、それがまた良かった。

 今は何でもスマートだが、昔は少し不器用で、少し大げさで、それが人間臭かった。

 また昭和の顔が一人、静かに舞台を降りた。
 テレビの前で笑わせてくれた人は、いなくなっても、不思議と笑顔のまま記憶に残る。

 親父は今夜、冷蔵庫からゆで卵を一つ取り出し、そっと塩を振って食べようと思う。

 きっと黄身は、いつもより少しだけ、しんみりした味がする。











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