『うなぎはタレで食べる』
西尾の老舗「平井」で上うな重(税込4,000円)を食べた。
西尾は抹茶ばかりが有名ではない。
うなぎの町でもある。
その町で長年暖簾を守ってきた店だから、店に入る前から「今日は間違いない」という安心感がある。
創業以来、地元で親しまれてきた老舗として知られている。
運ばれてきた上うな重を見て、まず思った。
「あれ、少し小ぶりかな。」
最近のうなぎは、どこの店でも「大きいですよ」「肉厚ですよ」と競争しているようなところがある。
だから最初は少し控えめな印象を受けた。
しかし、一口食べて考えが変わった。
美味い。
何が美味いかと言えば、タレである。
甘すぎず、辛すぎず、醤油が前へ出すぎることもない。
長年継ぎ足されてきたであろうタレが、ご飯にじんわり染みている。
その染みたご飯だけでも箸が止まらない。
親父は思うのである。
うなぎは半分、いや七割くらいはタレを食べているのではないか。
もちろん、うなぎそのものの香ばしさや脂のうま味があってこその話だ。
しかし、その魅力を最後にまとめ上げるのはタレなのである。
焼き鳥もタレ、天丼もタレ、うな重もタレ。
日本人は「タレ文化」の民族ではないか。
最後の一粒まで、ご飯をきれいにさらえて店を出た。
「うなぎはタレが命。」
そんな当たり前のことを、平井の上うな重が改めて教えてくれたのである。
その平井には立派な招き猫がいる。
『招き猫の手』
招き猫は、なかなか忙しい猫である。
一年三百六十五日、休みなく手を上げっぱなしだ。
右手を上げている猫もいれば、左手を上げている猫もいる。
因みに右手を上げている猫は金運・福を・幸運を招き、左手を上げている猫は客を招くから商売繁盛を願っている。
平井の招き猫は左手を上げていた。
また両手を上げている欲張りな猫までいる。
ところで、猫に「手」はあるのだろうか。
動物図鑑を開けば「前足」と書いてある。
獣医さんも「前足」と言う。しかし、
招き猫になると、急に「手を上げている」と言われる。
「前足を上げる招き猫」と言ったら、何だか動物病院の診察みたいである。
人間というものは勝手だ。
都合がいい時だけ「手」に昇格させる。
さらに不思議なのは、あの招き方である。
人間なら「こちらへどうぞ」と手のひらを上にして招く。
ところが招き猫は、手のひらを下に向けて「おいでおいで」をしている。
外国の人が見ると、「あれは追い払っているのではないか」と思うらしい。
ところが日本人は、「ああ、福を招いているな」と分かる。
文化とは面白い。
猫は何も考えていないのに、人間だけが勝手に縁起を担ぎ、商売繁盛だ、金運アップだと期待をかける。
招き猫は今日も黙って手を上げている。
文句ひとつ言わない。
もしあの猫が夜中にそっと手を下ろして、「やれやれ、肩が凝った」とつぶやいていたら、親父は少しだけ親近感を覚えるだろう。

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西尾の老舗「平井」で上うな重(税込4,000円)を食べた。
西尾は抹茶ばかりが有名ではない。
うなぎの町でもある。
その町で長年暖簾を守ってきた店だから、店に入る前から「今日は間違いない」という安心感がある。創業以来、地元で親しまれてきた老舗として知られている。
運ばれてきた上うな重を見て、まず思った。
「あれ、少し小ぶりかな。」
最近のうなぎは、どこの店でも「大きいですよ」「肉厚ですよ」と競争しているようなところがある。
だから最初は少し控えめな印象を受けた。
しかし、一口食べて考えが変わった。
美味い。
何が美味いかと言えば、タレである。
甘すぎず、辛すぎず、醤油が前へ出すぎることもない。
長年継ぎ足されてきたであろうタレが、ご飯にじんわり染みている。
その染みたご飯だけでも箸が止まらない。
親父は思うのである。
うなぎは半分、いや七割くらいはタレを食べているのではないか。
もちろん、うなぎそのものの香ばしさや脂のうま味があってこその話だ。
しかし、その魅力を最後にまとめ上げるのはタレなのである。
焼き鳥もタレ、天丼もタレ、うな重もタレ。
日本人は「タレ文化」の民族ではないか。
最後の一粒まで、ご飯をきれいにさらえて店を出た。
「うなぎはタレが命。」
そんな当たり前のことを、平井の上うな重が改めて教えてくれたのである。
その平井には立派な招き猫がいる。
『招き猫の手』
招き猫は、なかなか忙しい猫である。
一年三百六十五日、休みなく手を上げっぱなしだ。
右手を上げている猫もいれば、左手を上げている猫もいる。因みに右手を上げている猫は金運・福を・幸運を招き、左手を上げている猫は客を招くから商売繁盛を願っている。
平井の招き猫は左手を上げていた。
また両手を上げている欲張りな猫までいる。
ところで、猫に「手」はあるのだろうか。
動物図鑑を開けば「前足」と書いてある。
獣医さんも「前足」と言う。しかし、
招き猫になると、急に「手を上げている」と言われる。
「前足を上げる招き猫」と言ったら、何だか動物病院の診察みたいである。
人間というものは勝手だ。
都合がいい時だけ「手」に昇格させる。
さらに不思議なのは、あの招き方である。
人間なら「こちらへどうぞ」と手のひらを上にして招く。
ところが招き猫は、手のひらを下に向けて「おいでおいで」をしている。
外国の人が見ると、「あれは追い払っているのではないか」と思うらしい。
ところが日本人は、「ああ、福を招いているな」と分かる。
文化とは面白い。
猫は何も考えていないのに、人間だけが勝手に縁起を担ぎ、商売繁盛だ、金運アップだと期待をかける。
招き猫は今日も黙って手を上げている。
文句ひとつ言わない。
もしあの猫が夜中にそっと手を下ろして、「やれやれ、肩が凝った」とつぶやいていたら、親父は少しだけ親近感を覚えるだろう。
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