『うなぎはタレで食べる』

 西尾の老舗「平井」で上うな重(税込4,000円)を食べた。
 西尾は抹茶ばかりが有名ではない。
 うなぎの町でもある。
PXL_20260729_022401804~2 その町で長年暖簾を守ってきた店だから、店に入る前から「今日は間違いない」という安心感がある。
 創業以来、地元で親しまれてきた老舗として知られている。

 運ばれてきた上うな重を見て、まず思った。
 「あれ、少し小ぶりかな。」

 最近のうなぎは、どこの店でも「大きいですよ」「肉厚ですよ」と競争しているようなところがある。  
 だから最初は少し控えめな印象を受けた。

 しかし、一口食べて考えが変わった。

 美味い。

 何が美味いかと言えば、タレである。
 甘すぎず、辛すぎず、醤油が前へ出すぎることもない。

 長年継ぎ足されてきたであろうタレが、ご飯にじんわり染みている。
 その染みたご飯だけでも箸が止まらない。

 親父は思うのである。
 うなぎは半分、いや七割くらいはタレを食べているのではないか。

 もちろん、うなぎそのものの香ばしさや脂のうま味があってこその話だ。
 しかし、その魅力を最後にまとめ上げるのはタレなのである。

 焼き鳥もタレ、天丼もタレ、うな重もタレ。
 日本人は「タレ文化」の民族ではないか。
 最後の一粒まで、ご飯をきれいにさらえて店を出た。
 「うなぎはタレが命。」
 そんな当たり前のことを、平井の上うな重が改めて教えてくれたのである。



 その平井には立派な招き猫がいる。


『招き猫の手』

 招き猫は、なかなか忙しい猫である。
 一年三百六十五日、休みなく手を上げっぱなしだ。

PXL_20260729_024713560~2 右手を上げている猫もいれば、左手を上げている猫もいる。
 因みに右手を上げている猫は金運・福を・幸運を招き、左手を上げている猫は客を招くから商売繁盛を願っている。
 平井の招き猫は左手を上げていた。

 また両手を上げている欲張りな猫までいる。

 ところで、猫に「手」はあるのだろうか。
 動物図鑑を開けば「前足」と書いてある。

 獣医さんも「前足」と言う。しかし、
 招き猫になると、急に「手を上げている」と言われる。

 「前足を上げる招き猫」と言ったら、何だか動物病院の診察みたいである。
 人間というものは勝手だ。
 都合がいい時だけ「手」に昇格させる。

 さらに不思議なのは、あの招き方である。
 人間なら「こちらへどうぞ」と手のひらを上にして招く。
 ところが招き猫は、手のひらを下に向けて「おいでおいで」をしている。

 外国の人が見ると、「あれは追い払っているのではないか」と思うらしい。
 ところが日本人は、「ああ、福を招いているな」と分かる。

 文化とは面白い。

 猫は何も考えていないのに、人間だけが勝手に縁起を担ぎ、商売繁盛だ、金運アップだと期待をかける。
 招き猫は今日も黙って手を上げている。
 文句ひとつ言わない。
 もしあの猫が夜中にそっと手を下ろして、「やれやれ、肩が凝った」とつぶやいていたら、親父は少しだけ親近感を覚えるだろう。


人気ブログランキング
人気ブログランキング

にほんブログ村 オヤジ日記ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 オヤジ日記ブログ がんばるオヤジへ
にほんブログ村

ブログランキング・にほんブログ村へ