蝉がうるさい。
朝、窓を開けた瞬間に「シャワシャワシャワーッ!」と浴びせかけられる。
まだコーヒーも飲んでいないのに、耳だけはすっかり真夏である。
「ああ、今日も暑いな」と温度計を見る前にわかる。
日本人は昔から蝉の声を「夏の風物詩」と言うが、近頃は風物詩というより拡声器だ。
一本の木に何十匹も止まっていると、木全体が巨大なスピーカーになったようである。
蝉の鳴き声は、オスがメスを呼ぶための求愛なのだという。
しかし不思議だ。
人間なら「好きです」と一人に向かって言えば済むのに、蝉は森じゅうに響き渡る大音量で叫ぶ。
「私はここだあぁぁ!」
まるで選挙カーである。
それも朝から夕方まで休みなし。
こちらは「少し静かにしてくれ」と言いたいが、蝉からすれば命はほんのわずか。
7年幼虫で土の中にいて、成虫になって外にでれは、1週間の命である。 その短い夏を、全力で生きているのだろう。
だから腹も立つのだが、妙に憎めない。
夕方になってヒグラシが「カナカナ」と鳴き始めると、さっきまで「うるさい」と思っていた親父の心が急にしんみりする。
蝉とは不思議な生き物である。
昼は騒音、夕方は音楽。
同じ虫なのに、時間によって評価が180度変わる。
結局、人間というものは勝手だ。「うるさい」と文句を言いながら、秋になって蝉の声が消えると、 「今年の夏も終わったなあ」と、少しだけ寂しくなるのである。

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朝、窓を開けた瞬間に「シャワシャワシャワーッ!」と浴びせかけられる。
まだコーヒーも飲んでいないのに、耳だけはすっかり真夏である。
「ああ、今日も暑いな」と温度計を見る前にわかる。
日本人は昔から蝉の声を「夏の風物詩」と言うが、近頃は風物詩というより拡声器だ。
一本の木に何十匹も止まっていると、木全体が巨大なスピーカーになったようである。
蝉の鳴き声は、オスがメスを呼ぶための求愛なのだという。
しかし不思議だ。人間なら「好きです」と一人に向かって言えば済むのに、蝉は森じゅうに響き渡る大音量で叫ぶ。
「私はここだあぁぁ!」
まるで選挙カーである。
それも朝から夕方まで休みなし。
こちらは「少し静かにしてくれ」と言いたいが、蝉からすれば命はほんのわずか。
7年幼虫で土の中にいて、成虫になって外にでれは、1週間の命である。 その短い夏を、全力で生きているのだろう。
だから腹も立つのだが、妙に憎めない。
夕方になってヒグラシが「カナカナ」と鳴き始めると、さっきまで「うるさい」と思っていた親父の心が急にしんみりする。
蝉とは不思議な生き物である。
昼は騒音、夕方は音楽。
同じ虫なのに、時間によって評価が180度変わる。
結局、人間というものは勝手だ。「うるさい」と文句を言いながら、秋になって蝉の声が消えると、 「今年の夏も終わったなあ」と、少しだけ寂しくなるのである。
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