サンドウィッチマンの伊達さんが休養、バナナマンの日村さんも休養中、というニュースを読んだ。

 親父は記事を見ながら思った。
 「ああ、ラーメンの汁にも定年があるのか。」

 昔のラーメンは、最後に丼を両手で持ち上げて「ズズズッ」と飲み干すのが一種の美学だった。
 汁を残すと、店主に申し訳ないような気さえした。
 「お残しは許しまえんで!!]

ChatGPT Image 2026年9月5日 07_58_01  ところが最近は違う。
 テレビでは医者が「塩分は一日何グラムまで」と言う。
 妻は「汁は残しなさい」と言う。
 ラーメン屋さんは「飲み干してくれてありがとう」と言う。
 三者三様で忙しい。

 伊達さんは「お店の人がせっかく作ってくれたから」と完飲したという。
 その気持ちは実に日本人らしい。
 親父も畑で採れた茄子を「残したらかわいそうだ」と二本三本と食べることがある。

 しかし身体は、気持ちほど義理堅くない。
 血圧220いう数字を読んで、親父は思わず体温計を探した。
 血圧なのに体温計を探すところが老人である。

 220という数字は、もはや血圧というより高速道路の制限速度みたいだ。
 芸人には昔、「不健康で面白い」が勲章だった時代があったらしい。
 酒豪、大食い、徹夜自慢。
 まるで身体を酷使することが芸の肥やしだった。

 ところが最近は筋トレ芸人が増えた。
 腹筋が六つに割れた芸人が「今日は鶏むね肉です」と言う。
 昔なら笑われた台詞が、今では健康番組の司会になっている。

 時代は変わるものだ。
 親父も脊髄小脳変性症になってから、「無理をする」が格好いいとは思わなくなった。
 歩ける日は歩く。
 でもふらついたら杖を使う。
 休む日もリハビリのうちだと覚えた。

 若い頃は「食べられるうちが花」だった。
 今は「明日も食べられるように今日を食べる」が花である。

 だから伊達さんにも日村さんにも、ラーメンの汁を半分残して帰ってきてほしい。
 芸人が健康談義で笑わせる時代になっても、それはきっと十分に面白い。
 親父はそう思うのである。







 8月1日に別宅『爺の風は強く吹いている』を開設しました。
 併せてお楽しみください。




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