朝から雨である。
 雨というものは実に困る。
 デンパークの花は雨に濡れて風情があるのだろうが、親父のヨタヨタ歩きには風情より転倒の方が近い。

 というわけで今日も避難場所はららぽーと安城。
 最近の親父は、ららぽーとを歩くと「あそこは一周で何歩」と頭の中に地図ができている。
 西友で飲み物を一本買い、館内を隅々まで歩く。
 ショッピングモールがウォーキングコースになってしまった。


 二階に「東明館」という占いの店がある。
 いつも前を通るたび、「占いかあ…」と横目で見ていた。
 親父ぐらいの年になると、占いは若い娘さんが恋愛相談をする場所だと思っていたのである。

 ところが今日は違った。
 「えいっ」と相談席に座ってしまった。

copilot_image_1788671731666 相手は武田さんという女性占い師。
 親父は開口一番、「脊髄小脳変性症なんです」と切り出した。
 そして「これからどんな運命ですか」と聞いた。
 病気になると、人は医者だけでなく占い師にも未来を聞きたくなる。

 武田さんはあれこれ見て、「干支で見ると、巳年の去年と辰年の一昨年は親父さんにあわず波乱の年でした。でも午年の今年から十年は上り調子です。」と言う。
 十年。
 親父は思わず心の中で、「おお、十年もくれるのか」と欲張りな計算を始めた。

 しかし一番効いたのは別の言葉だった。
 「長い先を心配するより、今日できたことを書き留めてください。」

 なるほど。
 1.4㎞歩けた。
 西友まで行けた。
 エレベーターに乗れた。
 今日は転ばなかった。
 それだけで十分「出来た事」なのだ。

 さらに「人のために動ける人だから、できるボランティアを探してみて」と言われた。
 帰り道、親父は令和9年3月31日に再就職契約が終了するが、総合福祉センターへ相談に行こうと思った。


 不思議なものである。
 占いで病気が治るわけではない。
 未来が見えたわけでもない。

 それなのに二階、三階を歩く足取りが少し軽かった。
 どうやら今日いちばん占われたのは運勢ではなく、親父の気持ちだったらしい。












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