今日は『白露(はくろ)』である。
 二十四節気の十五番目、「草の葉に朝露が白く光り始める頃」という、
 なんとも詩人が考えたような名前の日である。
 2026年は9月7日が白露にあたる。 


file_0000000087b881fdbb8d0b1fc6d00246 ところが親父、朝起きて庭へ出ても「露」より先に見つけるのは雑草である。
 「おお、白露だ」
と思ったら、メガネが曇っていただけだった。

 白露という字面は涼しそうだ。
 しかし現実は、昼になるとまだ30度近い。
 「白露というより白汗である」。
 首筋から流れる汗は、露というにはあまりにも生活感がある。

 それでも朝だけは違う。
 駅まで歩く1.4㎞。
 田んぼの稲穂は頭を垂れ、ツクツクボウシの声も少し遠慮がちになっている。
 風が一枚薄くなり、「あれ、秋が混じっている」と思う瞬間がある。

 親父は脊髄小脳変性症で歩くと左右にぶれる。
 人生も歩幅もぶれている。
 しかし白露の朝だけは、「ゆっくり歩け」と季節が言ってくれている気がする。

 春は勢いよくやって来る。
 夏はドカンとやって来る。
 秋は違う。

 露ひと粒を草の葉に置いて、「来ましたけど、気づきました?」と遠慮がちにやって来る。
 親父はそんな秋が好きだ。

 人生も秋に入ると、派手な花火より、朝露一粒に目がいくようになる。
 それは歳を取った証拠ではなく、季節を見る目が少しだけ育ったということにしておきたい。





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